あわにゃん日記

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フィリピン人

呼吸器内科では、毎日誰か研修医1人が「外来当番」となり、初診患者のアナムネ(診察前の問診)を担当する。
今、研修医は4人なので、だいたい週に1回外来当番が回ってくる。
今日は俺が外来当番だった。


朝9時過ぎ、呼び出されて外来へ行くと、4人の初診患者が俺を待っていた。
「いつも2人ぐらいなのに、今日は多いにゃー」と思ったら、外来担当の若手の先生が手伝って下さり、お互い2人ずつアナムネを取ることになった。
よし、さっさとアナムネ終わらせて、仕事の山積みな病棟に戻ろうっと。
おっけーおっけー!


1人目のアナムネを無事に取り終わり、2人目のカルテを受付にもらいに行った。
すると、「残ってるのは、おばあちゃんと若いフィリピン人女性。どっちがいい?」と事務の女性に聞かれた。
ふぃ、フィリピン人っすか!?
…俺は日本人がいいっす!
若い女性は、なかなか聞きにくいこともあるから、苦手っす。
つぁはぁ〜。


と言うわけで、俺が日本人のおばあちゃんのアナムネを取ることになった。
外来待合室に出て、「××○○さーん」とそのおばあちゃんの名前を呼んだ。
しかし、みんなノーリアクション。
少し場所を移動して名前を呼んでも、またみんなノーリアクション。
3分待ってから名前を呼んでも、またまたみんなノーリアクション。
って、ざっけんな!
ババア、どこいったんだよ!


「この患者さん、どこにもいないんすけど…」と報告すると、「しょうがないなぁ」と事務の女性。
すると、彼女は俺の3倍くらいの音量で、待合室に向かって「××○○さーん!!」と叫んだ。
なるほど、この声量なら、どんなに遠くにいたって、どんなに耳が遠くたって、おばあちゃんは気付くだろう。
さっきは俺の声が小さくて、おばあちゃんは気付かなかったのかな…。
人前で大声を出すのに恥じらいがある俺って、なんか情けない男だな…。
野球部時代も、「アワヤ、もっと声出せよ!」って先輩に怒られてたっけ…。
つぁはぁ〜。


しかし、彼女の大声に対しても、待合室の患者たちはノーリアクション…。
って、ざっけんな!
結局、本当にいないんじゃねーかよ!
昔怒られたことを不必要に思い出しちゃったじゃねーか!


すると、「仕方ないから、先生はフィリピン人を担当してね(笑) ほら、もしかしたら、すごい美人かもしれないじゃない(笑)」と事務の女性。
って、ざっけんな!
美人は緊張するから嫌だし!
それに、俺は日本美人にしか興味ねーし!
…あ、いや、韓国美人にも興味あるかにゃ?
って、ざっけんな、俺!


そんなわけで、フィリピン人女性の問診を行った。
幸か不幸か、緊張するような美人ではなかった。
来日10年くらいらしく、日本語がペラペラでさらに安心した。
ふう、いつも通り、普通に問診終わりそうだにゃー。
おっけーおっけー!


と思ってたら、「血の繋がった人で何か病気をされた方はいますか?」と家族歴を聞いたときに、事件は起こった。
「母ガ珍シイ病気デス。日本語デ何テ言ウカ分カリマセンガ、英語デノ病名ナラ分カリマス。」とフィリピン人が言い出したのだ。
一瞬にして、急激に緊張が走った。


受験生みたいにめっさリスニングの心構えをして、「はい、英語でもいいですよ!」と平然を装って答えた。
すると、「母ノ病名ハ、『multiple ××』デス!」とフィリピン人。
「まるてぃぷる」は聴き取れたけど、早口でその次の言葉がよく分からなかった。
焦りを隠しつつ、「ん? もう1回いいですか?」と俺。
すると、聴き取りやすいように今度はゆっくりと発音してくれるフィリピン人。
「『multiple sclerosis』デス!」


おおー、分かったー!
「MS」、つまり「多発性硬化症*1」のことだにゃー!
2〜3月、神経内科でMSの患者を受け持っておいて良かったにゃー!
おっけーおっけー!


聴き取れてホッとしてるのを隠し、「ああ、『multiple sclerosis』ですか。日本語では『多発性硬化症』って言うんですよー。」と教えてあげた。
すると、「日本語ダト、ムズカシイデスネ(笑)」とフィリピン人。
って、ざっけんな、俺!
1回で聴き取れなかったくせに、偉そうに語ってんじゃねーよ!


そんな感じで、今朝の外来当番は終わった。
って、ざっけんな!
家族歴1つ取るだけで、なんでこんなにテンパらなきゃいけないんだよ!
だから、外国人の患者は苦手だし!
つぁはぁ〜!



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*1:中枢性脱髄疾患の一つ。脳、脊髄、視神経などに病変が起こり、多様な神経症状の再発と寛解を繰り返す疾患。