あわにゃん日記

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ラストシーン

今日は西医体2戦目。
相手は琉球大学医学部。
この試合に勝てば、準々決勝へ進出が決まる。
おっけーおっけー!


琉球大学は、九山(九州山口大会)でもよく見かけるけど、さほど強くはない。
ウチが実力を出せば、余裕で勝てる相手だ。
しかし、今日の試合はイマイチ締まっていなかった。
両チームともエラーがかさみ、5回終了時点で4対3と辛くも1点リードの展開。
うーん・・・。


と思っていたら、6回表、試合を大きく動かす場面が訪れた。
ランナーを2人置いて、バッターは3番・ミムさん
この打席のミムさんは、ベンチから見ていても、1球1球に対する集中がよく伝わってきた。
タイムリーヒットが、かなりの可能性で出そうな良い予感がしていた。


そして、ミムさんが打った。
バットの真芯に当たった。
打球を見て、「ま、まさか、これは・・・」と思った。
その予感通り、すごい勢いで伸びていった打球は、あっという間にレフトフェンスを越えてしまった。
・・・3ランホームラン!!
うおぉぉぉ!
あんた、カッコ良すぎるよ!!


興奮の宮医ベンチ。
ダイヤモンドを一周し、ベンチに戻ってきたミムさんに思わず抱きついてしまった。
これで7対3となり、ムードも最高潮となり、この時点で俺は今日の勝利を確信した。
おっけーおっけー!


しかし、その確信と裏腹に、味方はそれ以降追加点を取れず、逆にエラーやヒットで次々と点を挙げられ、苦しい展開に。
そして、遂に同点に追いつかれ、更に勝ち越しの1点を取られてしまった。
8回終了時点で、7対8。
残る攻撃は9回表のみ・・・。


迎えた9回表、同点のランナーを出すものの返すことができず、最後はダブルプレーでゲームセット。
ま、負けた・・・。


試合後の礼を済ませ、ベンチを片付け、球場の外の駐車場へ出た。
アスファルトに腰を下ろし、しばらくの間、全員無言で座っていた。
タオルで目を覆っている者がいたり、うつむいてタバコを吸ってる者がいたり・・・。
我々医学生の最大の舞台である西医体、灼熱のグラウンドで毎日練習しながらずっと優勝を目指してきた西医体、そして5人の最上級生と一緒に戦える最後の西医体は、まさに今、終わってしまったのだ。


俺もアスファルトの上に座っていた。
涙を流すわけでもなく、ただ脱力してタバコを吸っていた。
しばらくして、誰かが俺の目の前に立ち、手を差し出してきた。
顔を上げると、この大会で引退する6年生のフジシマさんだった。


俺も手を差し出し、握手した。
俺の手を握ったままフジシマさんは、「あわにゃん、今までありがとう。早くレギュラーになるんだよ。俺なんかより、もっと良い選手になるんだよ。」と優しく言い、にっこり微笑んだ。
その言葉を聞いて、「もう、フジシマさんや他の6年生やマネージャーたちと、一緒に野球をすることはないんだな・・・」と、改めて思った。
すると、俺の視界は急に湧き出した涙で一瞬にしてぼやけ、その溢れた1滴が頬を伝った。
俺はただただ、「お疲れ様でした。」と言うことしかできなかった。
それが、今年の夏のラストシーンだった。


フジシマさんアツシさんエトーさんカナさんオオグシさん、皆さんお疲れ様でした。
そして、今までありがとうございました。