あわにゃん日記

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謎の美女

九山が終わり、また再び毎日学校へ行く生活に戻った。
いまだに、今年の出席率100%は保っている。
ん?
意外?
ざっけんな!
俺だって、やればできるし!


朝起きるのにも慣れ、最近は全く苦痛に思わない。
自分で選んだ学部なので、講義も真面目に聞いていると、割と楽しい。
ただ、俺には苦痛なことが1つだけある。


それは、昼休みだ。
俺は1年の頃から、学校でメシを食うということが、苦痛で仕方ない。
学食や売店の弁当が嫌がらせのように不味いのと、昼休みはどこへ行っても人が多いというのが理由である。
と言うわけで、廃人的な安らぎを求め、俺は昼休みの60分間、一度帰宅することが多い。


そんなわけで、今日も午前の講義が終わり、学生駐車場へ向かって歩いていた。
いつも通り伏し目がちに歩きながら、ふと遠くを見ると、目もと以外を覆う大きなマスクをして白衣姿の、若そうで美人そうな女医さん風の人がこっちに向かって歩いてくるのが見えた。
でも、全く知らない人だったので、気にせずまた伏し目がちに歩いていた。


しばらく経って、気配がしたので顔を上げると、さっきの女医さん風の人との距離が10メートルくらいまで狭まっていた。
一瞬目が合ってしまったけど、気にせず、また視線を落とそうとしたら、ここで事件が起こった。
なんと、全く知らないその女医さん風の女性が、俺に向かって手を振ってきたではないか!


んんっ!?
俺に手を振ってんの!?
慌ててキョロキョロするが、彼女が手を振る相手は俺以外に誰もいない。
俺は今、誰か分からない女性から、間違いなく手を振られている。
・・・意味が分かんないにゃー!
つぁはぁ〜!


一体、彼女は誰なのだろう。
でかいマスクをしているせいで、彼女の顔は、目しか見えない。
うーん、女友達なんてほとんどいないから、元カノかにゃ?
って、ざっけんな!
元カノの顔を忘れるほど、恋愛経験豊富じゃねーし!


んじゃ、昔、合コンで遊んだ人かにゃ?
って、ざっけんな!
生まれて一度も合コンなんか行ったことねーし!
誘われたことはあるけど、基本的に知らない人と話すの苦手だから、いつも断るんだよ!


んじゃ、昔、行きずりで一夜限りの過ちを犯した人かにゃ?
って、ざっけんな!
そんな楽しい思い出なんか、27年間、ひとつもないし!
俺の人生は過ちだらけだけど、こっち方面では過っちゃったことはねーんだよ!


って、改めて振り返ってみると、俺の人生って、異性にあまり縁のない、つまんない人生だにゃ・・・。
・・・って、ほっとけよ!


結局、訳が分からないまま、10メートルあった彼女との距離は、見る見るうちに無くなっていった。
俺はどうリアクションをしていいのかテンパり、汗さえかいていた。
もう走って逃げちゃおうかにゃ?
でも、そんなことをすれば、きっと3日くらい気になって眠れなくなるしにゃ・・・。
俺はもはや歩くのをやめ、近づいてくる彼女の顔の唯一の露出部分である目を、じっと見つめていた。


それは、彼女との距離が1メートルになったときだった。
・・・ああぁぁぁぁぁっ!
遂に分かった、同期入学のミロリちゃんだぁっ!
この春から医者になって、ウチの大学病院に就職したのか!


俺はテンパりから解放された安堵のため息をつき、「誰かと思ったよ…」とミロリちゃんに漏らすように言った。
すると、「なんでよ〜?」と笑うミロリちゃん。
「まさか、同期の顔を忘れたの?」と言いたげである。


って、ざっけんな!
至近距離になるまで分からなかったのは、そんな馬鹿でかいマスクしてるからだし!
おかげで、自分のしょうもない人生を、不必要に振り返っちゃったじゃねーか!
ざっけんなー!!